- LATSがモンテカルロ木探索(MCTS)の選択・拡張・評価・シミュレーション・逆伝播・省察という6段階をLLMエージェントの行動選択にどう適用するかを説明できる
- UCTによる探索と活用のバランス、およびLLM-as-judgeとself-consistencyを組み合わせた価値関数の設計を理解する
- SPRINTが推論トレースをplanとexecutionに分解しDAG化することで、並列推論を学習させる仕組みを説明できる
- SWiRLがオフラインでツール実行を切り離しながら、プロセス報酬に基づく多段階強化学習でツール利用と推論を最適化する仕組みを理解する
- 三手法に共通する「LLM自身を使った合成データ生成」と「訓練外タスク・ツールへの汎化」という設計思想を整理できる
5.1導入 — 多段階推論とプランニングの三つのアプローチ
本章では、LLMエージェントが単発の応答生成ではなく、複数のステップにわたって推論し、行動し、その結果を踏まえて計画を修正していくための手法を扱う。講義では旅行計画を例に、多段階タスクの構造を三つの要素に分解して説明した。まずreasoning(推論)では、予算や日程といった計画の要件を考える。次にact(行動)では、その推論に基づいてウェブ検索を行ったり、Redditや旅行ブログを読んだりして情報を収集する。そしてsearch(探索)では、収集したフィードバックをもとに計画を見直し、代替の目的地や現地でのアクティビティを再検討する。この推論・行動・探索のループを繰り返しながら最終的な解に到達するのが、多段階タスクの一般的な構造である。
この構造を扱う上での最大の課題は、LLMが多様な解法や経路を作り出し、それらを多段階にわたって最適化していく能力に弱さを抱えているという点である。単一の応答を生成させるだけでは探索の幅が狭く、局所的な解に落ち着きやすい。本章で紹介する三本の論文——LATS(ICML掲載)、SPRINT(NeurIPS 2025)、SWiRL(COLM 2025でMontrealにて発表予定)——は、いずれもこの課題に異なる角度から取り組んでいる。LATSはモンテカルロ木探索(MCTS)をLLMの行動選択に持ち込み、SPRINTは推論トレースを並列実行可能な単位に分解してファインチューニングし、SWiRLはツール呼び出しを伴う多段階推論をオフラインデータから強化学習で最適化する。三本に共通するのは、人手ラベルではなくLLM自身を使って学習データを生成し、学習させた振る舞いが訓練時に見ていないタスクやツールにも汎化するという観察である。
5.2LATS — Reasoning・Acting・Planningを統合する木探索
LATS(Language Agent Tree Search)は、LLMが生成した計画をそのまま実行するのではなく、複数の計画候補を探索し比較しながら最良の経路を選び出すことを目指した手法である。講義では、ハワイ旅行を計画するプロンプトを例に説明された。モデルに行動をサンプリングさせると、「ハワイに行ったことのある友人に聞く」「関連するsubredditを読む」といった複数の行動が候補として得られる。LATSはこれらの行動それぞれにスコアを付け、スコアの高い行動から優先的に木を展開していく。例えば「友人Aと友人Bの両方に意見を聞く」という行動が高スコアであれば、そこからさらに枝分かれさせて探索を続ける。行動は並列に実行可能であり、探索(新しい行動を試す)と活用(すでに有望な行動をさらに掘り下げる)のバランスを取る点でMCTSの考え方がそのまま持ち込まれている。
LATSは既存の二つの系譜から着想を得ている。一つはMath Shepherdで、こちらはverifierが推論トレースをスコアリングしてテスト時の探索を導く方式だった。もう一つはReActで、行動と環境からの観測を組み合わせて推論を進める枠組みである。LATSはMath Shepherdと異なり、推論トレース自体ではなく行動の結果(アウトカム)に基づいてスコアリングを行う点、そしてReActにモデル自身による省察(reflection)のステップを追加した点が特徴である。
UCTは多腕バンディット問題における探索手法の一つに過ぎず、他のバンディットアルゴリズムとの比較は論文内で行われていないという指摘が学生からあった。講師はこれを認めた上で、LATSの本質的な貢献は特定の探索アルゴリズムの優位性を証明することではなく、LLMエージェントの行動選択に木探索を組み込む「プラットフォーム」を提供した点にあると位置づけた。同様に、同一行動が異なるノードで繰り返し出現した場合の扱いについても質問が出たが、LATSでは親ノードを基準に訪問回数をカウントし、それをUCTの計算に反映させることで対応しており、完全グラフではなく木としての構造を前提としている。
5.3LATSのアルゴリズム — 6段階のプロセス
LATSは選択(selection)・拡張(expansion)・評価(evaluation)・シミュレーション(simulation)・逆伝播(backpropagation)・省察(reflection)という6段階から構成される。講義では「迷路を抜けて出口に到達する」というプロンプトを例に、この流れが具体的に説明された。
- 選択: UCTスコアに基づき、次に展開すべきノードを選ぶ。
- 拡張: 選ばれたノードから複数の行動をサンプリングする。例では「左のドアを開ける」「右のドアを開ける」「部屋を調べて手がかりを探す」の3つの行動が生成された。
- 評価: 各行動を環境で実行し、得られた観測(例:「左のドアを開けると絵画のある暗い廊下があった」)をコンテキストに追加した上で、その状態がどれだけ有望かをスコアリングする。
- シミュレーション: 最もスコアの高い状態からさらに行動をサンプリングし、成功か失敗か、あるいは展開予算の上限に達するまで探索を継続する。
- 逆伝播: シミュレーションの結果(成功/失敗)を経路上の各状態の価値に反映させる。
- 省察: 経路が成功・失敗した理由についてモデル自身に振り返らせ、その省察を以降の探索に活用する。
例では、階段に近づく行動を取った結果、出口のドアがはっきり見える観測が得られ、この経路が高く評価された。この評価結果が逆伝播によって経路上の各ノードのスコアに反映され、以降の探索方針を更新していく。
5.4価値関数・UCT・逆伝播の数理
LATSの評価段階では、ある状態の価値を二つのスコアの合成として計算する。一つはLLM-as-judgeによるスコアで、モデル自身にその状態がどれだけ成功に近いかを0から1の範囲で評価させる。もう一つはself-consistencyスコアで、例えば50回行動をサンプリングして種類ごとに分類したとき、ある行動が全体の75%を占めていれば、その行動に対応する状態には高いスコアが与えられる。この二つを足し合わせることで、一つの状態に対する単一の価値が得られる。
次にノードの選択に使われるのがUCT(Upper Confidence bound applied to Trees)である。UCTはMCTSの文献からそのまま借用された考え方で、状態の価値V(s)に、探索を促す項をハイパーパラメータ倍して加える形を取る。探索項は親ノードの訪問回数N(parent)と当該ノードの訪問回数N(s)の比に基づいており、あるノードが親に対して相対的にあまり訪問されていなければこの項は大きくなり、そのノードを優先的に探索するよう促す。逆に訪問回数が増えるほどこの項は小さくなり、UCTは価値スコアに収束していく。これにより、現時点でのスコアが低くても将来有望かもしれないノードを見逃さないよう、探索と活用のバランスを取ることができる。
逆伝播では、あるノードの価値は「(旧い価値 × これまでの訪問回数 − 1 + 今回のリターン) ÷ 総訪問回数」という更新式で計算される。講師はこの式について、最適性を数学的に証明したものではなく、探索と活用を経験的にバランスさせるための設計であると説明した。
5.5LATSの実験結果と限界
LATSはHotpotQAとWebShopという二つのベンチマークで評価された。HotpotQAは、一つの質問に答えるために少なくとも2つの異なるWikipediaページからの検索が必要になるよう設計されたデータセットであり、本質的に多段階の情報収集を要求する。LATSはサンプル数(探索する経路の数)を増やすほど性能が大きく向上し、省察のステップを加えることでさらに精度が底上げされることが示された。すなわちLATSは、テスト時により多くのコンピュートを投入するほど、多段階推論タスクの解の質を高められる仕組みを提供している。WebShopは「すでに組み立て済みの小型ポータブルデスクを、指定の色・仕上げ・価格帯で探す」といった実務的な検索・比較タスクを模したデータセットであり、LATSは追加のファインチューニングなしにテスト時の探索だけで人間の専門家に近い成績を達成した。
講師はLATSの弱点として二点を挙げた。第一に、選択・拡張・評価・シミュレーション・逆伝播という各ステージがいずれも追加の推論コストを伴うため、全体のコストが大きく膨らむにもかかわらず、論文はコスト対効果の分析を行っていない。第二に、行動が不可逆な場面——例えば決済のような取引を実際に実行してしまうケース——にLATSは対応していない。探索の途中で行動を「試す」ことを前提にした枠組みであるため、後戻りできない副作用を持つ行動をどう扱うかは未解決の課題として残されている。
5.6SPRINT — 推論の並列化によるテスト時計算の効率化
SPRINTは、o1やGemini 2.5 Proのような推論モデルが「難しい問題ほど長く思考し、その思考の長さが精度と相関する」という観察に着目したNeurIPS 2025の論文である。実際、DeepSeek-R1の学習過程を見ると、AIMEのような数学問題の正答率が向上するにつれて、1応答あたりの平均トークン長も伸びていく傾向が見られる。しかし講師は、この長い思考ステップの多くが実際には互いに独立しており、逐次的に生成する必要がないと指摘した。モデルは複数の解法を並行して試したり、タスクをサブタスクに分解したり、直前のステップを検証したりするが、これらの計算の一部は本質的に並列化可能である。SPRINTはこの並列化の機会をモデル自身に見つけさせ、実際にそれを利用させることを狙いとしたポストトレーニング手法である。
具体的には、SPRINTは推論モデルに「プランナー」としての役割を持たせ、複数の計画を生成させた上で、それぞれの計画を並列に実行する「エグゼキューター」群に処理させる。この計画生成と並列実行のサイクルを繰り返すことで、推論全体を高速化する。プラン1とプラン2が互いに独立していれば、モデルはプラン1の実行完了を待たずにプラン2を生成し、両者を同時に実行に回すことができる。
5.7SPRINTの学習データ生成と結果
SPRINTの学習データは、既存の推論モデル(DeepSeek-R1)が生成した推論トレースをGPT-4oに読ませ、ステップに分解・注釈させることで作られる。GPT-4oは各ステップについて「計画部分」と「実行部分」を区別し、さらにステップ間の依存関係を分析してDAG(有向非巡回グラフ)を構築する。例えばステップ4とステップ2が互いに独立でともにステップ1に依存する場合、ステップ2と3は並列に実行できるとパッキング(束ね直し)される。こうして作られたplan/execution付きのデータセットを使い、DeepSeek-R1のQwen 7B蒸留モデルに対して教師あり学習(SFT)を行うことで、モデルは推論時に「プラン1」「プラン2」といったタグを自ら出力し、対応する実行を並列に走らせられるようになる。
SPRINTで学習したモデルは、逐次トークン数を削減しながらベースラインより約3.5ポイント高い精度を達成し、逐次トークン数の観点ではより大きな32Bモデルよりも効率的になった。学習データは数学問題のみだったにもかかわらず、Countdownやgpqa diamondといった訓練に含まれないタスクでも精度と並列化機会の両方が向上する分布外汎化が確認された。また、難しい問題ほど反復的な計画・実行が必要になる一方、探索は序盤に多く、終盤にかけて単一の計画に収束していく傾向も観察された。
「並列に分割したタスクの実行時間が偏っていたらどうするか」という質問に対し、講師は完全な負荷分散の保証はできないと認めた上で、あるステップの実行が単純すぎる場合は計画側に統合してより大きな塊にまとめる工夫を行っていると説明した。また「並列ブランチが個々には正しくても組み合わせると矛盾する場合はどうなるか」という質問には、逐次でも並列でも最終的にはすべてがコンテキストに集約され、モデルが矛盾を解消した上で最終回答を合成することが期待される、と回答した。さらに講師は余談として、Claudeの最近のシステムカードが「ツールを少なくとも100回使うことを推奨する」記述を含んでいたことに触れ、モデルが扱う推論の規模が数千〜数万トークンへと拡大している時代の一例として紹介した。
5.8SWiRL — ツール利用を伴う多段階推論の強化学習
SWiRL(COLM 2025でMontrealにて発表予定)は、検索エンジンを使った多段階の質問応答、数学問題の求解、ソフトウェア開発、旅行計画、データ分析など、複数回のツール利用と推論を必要とする現実的なタスクを対象とする。講義ではこの種のタスクの難しさとして、単発のツール利用だけでも複雑になりがちな上、ステップを重ねるほど誤りが複合的に積み重なっていく点、そして学習中に実際にツールを呼び出すとツールの失敗や遅延によって学習プロセス自体が不安定・低速になる点が挙げられた。また、RLHFやAIフィードバック、実行結果に基づくフィードバックといった従来の手法の多くは、最終的な答えの正誤だけを報酬とする単一ステップ最適化に留まっており、途中のプロセスに対する統制が欠けているという課題認識も示された。
SWiRLの設計目標は、モデルに「いつツールを呼ぶべきか」「ツールに渡す適切なクエリをどう生成するか」「複数ステップにわたって精度を維持するか」「エラーからどう回復するか」「いつ新しいステップを止めて最終回答を出すべきか」を学習させることである。同時に、学習中の実ツール呼び出しを避け、学習後は未知のツールや推論タスクへ汎化できることも狙いとされた。
5.9SWiRLの学習パイプラインと汎化性
SWiRLはまずオフラインで合成データを生成する。プロンプトに対してモデルに1ステップずつ推論・ツール呼び出し・最終回答のいずれかを選ばせ、環境からの応答をコンテキストに追加しながら次のステップを繰り返し生成させる。各ステップには、直前の文脈とそのステップの行動(推論+ツール呼び出し)だけを見せた上でLLM-as-judgeにスコアを付けさせる。重要なのは、判定者はツールの実行結果ではなく、生成されたクエリの質そのものを評価する点である。例えば「年齢が上なのは誰か」という質問に対して「まず一人目の年齢を検索すべきだ」という行動を評価する際、判定者はその人物の実際の年齢を知らなくても、質問として妥当かどうかを判断できる。このプロセス報酬付きのデータをもとに、実際の学習段階ではツールを一切実行せず、事前に収集済みの行動と環境応答をコンテキストとして与え、モデルに次の行動を生成させてその報酬だけを使って多段階RLで最適化する。
学習データはGemma2-27Bを使ってHotpotQAとGSM8Kから約5万トレースを生成し、プロセスでフィルタしたデータ・アウトカムでフィルタしたデータ・両方でフィルタしたデータ・ランダム抽出データを比較した。結果として、最終回答の正誤にかかわらずプロセス(各ステップの質)だけでフィルタしたデータのほうが学習に有効であることが分かった。これは、最初から正解にたどり着けていたトレースだけを使うと、モデルがまだ解けない問題を解けるように学習させる機会が失われてしまうためだと説明された。
電卓ツールを使うGSM8Kで学習したSWiRLモデルを、検索ツールを使うHotpotQAでテストすると精度が65%から71%に、逆にHotpotQAで学習して同一タスクでテストすると65%から73%に向上した。さらに興味深いのは、HotpotQAの学習データを100件から1万件へと増やすにつれ、まったく別ドメインであるGSM8Kのテスト精度までもが向上し続けた点である。これは、モデルが特定のツールの使い方を覚えているのではなく、「ステップに分けて考え、ツールを呼び出す」という振る舞いそのものを学習し、それが未知のツール・未知のドメインへ転移していることを示している。学習後のモデルは、訓練分布内・分布外の双方でステップごとのプロセス報酬の平均値が改善しており、これは1ステップごとの思考の質そのものが底上げされたことを裏付ける。なお、同じデータを教師あり学習(SFT)で使った場合、多段階RLに比べて性能は劣った。SFTは模倣学習に近いため、プロセスは良くても最終的な答えが誤っているトレースを含めると悪影響が出やすい一方、RLでは途中の行動に新しいチャンスを与えられるため、こうした制約から抜け出しやすいと説明された。
- LATSはMCTSの選択・拡張・評価・シミュレーション・逆伝播・省察という6段階をLLMエージェントの行動選択に組み込み、テスト時により多くのコンピュートを投じることで多段階タスクの精度を高める
- LATSの価値関数はLLM-as-judgeとself-consistencyスコアの合成であり、UCTが探索と活用のバランスを取るが、コスト分析と不可逆な行動への対応は未解決のまま残されている
- SPRINTは推論トレースをplan/executionに分解しDAG化することで並列実行の機会を学習させ、逐次トークン数を削減しながら精度も同時に向上させる
- SPRINT・SWiRLともに、合成データ生成にLLM自身(GPT-4o、Gemma2-27B等)を用い、訓練時に見ていないタスクやツールへの汎化性が確認されている
- SWiRLはオフラインでツール実行を切り離し、生成されたクエリの質そのものをLLM-as-judgeで評価するプロセス報酬に基づいて多段階RLを行うことで、学習の高速化と安定化を両立する
- SWiRLではアウトカムだけで正解フィルタしたデータより、プロセスの質でフィルタしたデータの方が学習に有効であり、同じデータで比較するとSFTよりRLの方が高い性能を示した
- 三手法に共通するのは、LLMに『多段階で考え、行動する』という一般的な振る舞いを学習させることで、特定のタスク・ツールの枠を超えた汎化が生まれるという知見である
講義の言葉
"So this method concretely has six types of kind of stages. selection, expansion, evaluation, simulation, backpropagation, and reflection."
[07:36] LATSの中核となる6段階のアルゴリズム構造を端的に述べた一文であり、以降の解説全体の骨格になっているため。
"The downside, of course, is the cost."
[19:23] 木探索ベースの手法が持つ根本的なトレードオフ(精度向上とコスト増大)を講師自身が明言した箇所であり、LATSを実務適用する際の判断材料として重要。
"I'm not sure how many of you have read the recent Sonnet 4.5 system card, but it was very interesting to me that it says the prompt for the system card encourages the model to use tools as much as possible and at least 100 times."
[45:58] 数千トークン規模の逐次推論を前提にしていた講義の議論が、実際のフロンティアモデルの運用(ツール呼び出し100回以上)ともつながっていることを示す実例であり、本章の技術がなぜ実務上重要かを裏付けている。
"But perhaps the most interesting, and this is again something that we are seeing in the sprint project as well, is the generalization performance of the model."
[68:29] SPRINTとSWiRLの両方に共通する最重要の発見——特定タスク・ツールを超えた汎化性——を講師自身が強調した発言であり、本章全体を貫くテーマを言語化している。
用語集
- LATS (Language Agent Tree Search)
- モンテカルロ木探索をLLMエージェントの行動選択に統合し、reasoning・acting・planningを一体化して多段階タスクを解く手法。
- MCTS (Monte Carlo Tree Search)
- 選択・拡張・シミュレーション・逆伝播を繰り返しながら探索木を成長させる古典的な探索アルゴリズム。LATSの基盤となっている。
- UCT (Upper Confidence bound applied to Trees)
- MCTSにおけるノード選択の指標。状態の価値に探索を促す項を加え、訪問回数の少ないノードを優先的に探索させることで探索と活用のバランスを取る。
- ReAct
- 推論(reasoning)と行動(acting)を交互に行い、環境からの観測をコンテキストに取り込みながら次の行動を決める先行フレームワーク。LATSが省察の要素を加えて拡張した。
- Math Shepherd
- verifierが推論トレースをスコアリングしてテスト時の探索を導く先行研究。LATSは行動の結果に基づくスコアリングという点でこれと異なる。
- self-consistency
- 同一プロンプトに対して複数回サンプリングした行動・回答の頻度をスコアとして扱う手法。LATSの価値関数の一要素として使われる。
- LLM-as-judge
- LLM自身に別のLLMの出力(行動・推論ステップ・トレース全体など)の質を評価させる手法。LATS・SPRINT・SWiRLいずれの合成データ生成・評価にも用いられる。
- SPRINT
- 推論トレースをplanとexecutionに分解しDAG化することで、独立したステップを並列実行させ、テスト時の逐次トークン数を削減しながら精度を高めるポストトレーニング手法。
- DAG (Directed Acyclic Graph)
- 有向非巡回グラフ。SPRINTでは推論ステップ間の依存関係を表現し、独立したステップの並列実行可能性を判定するために用いられる。
- SFT (Supervised Fine-Tuning)
- 正解となる入出力データを模倣させる教師あり学習。SPRINTの学習やSWiRLとの比較対象として登場する。
- SWiRL
- ツール呼び出しを伴う多段階推論を、オフラインで収集した行動とプロセス報酬に基づく強化学習で最適化する手法。学習中に実際のツール実行を行わない点が特徴。
- process reward / process filter / outcome filter
- 各推論ステップの質そのものに対する報酬(process reward)、それに基づいて学習データを選別する方法(process filter)、最終回答の正誤のみで選別する方法(outcome filter)。SWiRLの実験で両者の効果が比較された。
言及された研究・システム
| 名称 | 講義での文脈 |
|---|---|
| LATS (Language Agent Tree Search) | 本章の中心となる論文。ICMLに掲載され、モンテカルロ木探索をLLMのreasoning・acting・planningに統合する手法として詳しく解説された。 |
| Math Shepherd | verifierが推論トレースをスコアリングしてテスト時探索を導く先行研究として、LATSとの違いを説明する文脈で言及された。 |
| ReAct | 行動と環境観測を組み合わせる先行フレームワークとして、LATSが省察のステップを加えて発展させた元になる研究として言及された。 |
| SPRINT | NeurIPS 2025の論文として紹介され、推論の並列化によるテスト時計算効率化を扱う本章2本目の柱として詳述された。 |
| SWiRL | COLM 2025(Montreal)で発表予定の論文として紹介され、ツール利用を伴う多段階推論の強化学習を扱う本章3本目の柱として詳述された。 |
| DeepSeek-R1 | SPRINTの学習データ生成の元となる推論トレースの生成、および蒸留モデル(Qwen 7B)のファインチューニング対象として複数回言及された。 |
| Claude Sonnet 4.5 system card | 講師が余談として、ツールを少なくとも100回使うことを推奨する記述に触れ、多段階ツール利用が大規模化している時代性を示す実例として紹介した。 |